なまじ成功体験があると、それが尾を引き、揚げ句に足を引っ張るという。
本当だろうか。
成功した経験のない人間のやっかみかもしれない。
逆に成功体験がなければ、どうすれば成功するのか不案内であるし、もし自分が成功への道をひた走りしていたとしても、それが必ず成功へと通じる道なのだという感触すらつかめないだろう。
それに、1つのことで頂点を極めた人間は、何をやってもかなりいい線までいく、なんてこともよく言われる。
さて、あるとき予算の少ない仕事をしていた。
見かけは同じ仕事をするにも、予算のあるところは、たぶんわれわれの10倍くらいのお金をかけていたのではないかと思う。
いや、10倍ではきかないかもしれない。
で、予算がないから、一人で何役もかけ持ちだった。
働けど働けど、わが暮らしは楽にならなかったのだが、本職以外のいろいろな仕事をかけ持つことは、それはそれで楽しいことではあった。
だから、ある程度、その状況に満足していたのだが、あるとき、あることが気になった。
もし、この予算のない仕事に慣れきってしまったら、貧乏根性が体の芯にまで染みついてしまい、もし、潤沢な予算を与えられたとしても、それをどう使えばいいのか見当もつかないような人間になってしまうのではないか、ということだった。

